街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年9月・草加「古本市場草加店」

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古本市場草加店と私。

9月某日

9月には3連休が2回あったのだが、どちらも何かと用事が入って遠出をする気分ではなかった。せめてどこか気分の変わるところで散策を、と考えていたら日光街道の草加松原を思いついた。以前に何度か歩いた場所である。水辺に約1㎞半にわたって松が植えられているだけだが、小さな散策にはちょうどよかろう。

昼食を済ませて午後に移動、草加駅にはおせんがいる。おせんとは、草加せんべいの祖とされる人で、餅屋をやっていたが、売れ残るのでそれを焼いて出すようになった。それがせんべいの元祖だというのである。せんの餅だからせん餅というわけである。いわば草加を代表する偉人だと思うのだが(架空の人だろうけど)、駅前のベンチと一体化するようにその銅像は置かれている。行ってみたら、カップルが横で涼んでいて、何しに来たの、という目でぎろりと睨まれた。

ここから北東に歩いて行くと、国道49号線沿いに、そのおせんにちなんだおせん公園がある。道を渡った北側には札場河岸公園。そこから綾瀬川沿いに松原が広がっているのである。

草加は松尾芭蕉ゆかりの地でもある。深川から千住までを舟で渡った芭蕉は、そこから歩き始める。最初に泊まったのが日光街道第二の宿、草加だったのである。

というわけで札場河岸公園には芭蕉像がある。随伴した弟子の河合曽良の像もある。ただし札場河岸公園で師と並んでいるわけではなく、国道49号線を挟んではるか後ろ、おせん公園に建っているのである。何もそんなに離さなくても。下の写真で見るとわかるが、芭蕉の位置からは曽良が豆粒のように小さい。俳聖も心なしか、ちっ、あの愚図遅れやがって、と顔をしかめているように見える。草加市は二人をもう少し近づけてやることを検討してはどうか。

松尾芭蕉と

河合曽良

芭蕉の目から曽良はこんなに小さい。わかりにくいと思うが車の列の彼方に、ぴょこんと小さく突き出ている黒い棒が曽良である。

松原を歩き始める。ここを最初に歩いたときは、えのきどいちろうさんと一緒であった。レポのイベントで栃木市で講演をすることになり、せっかくだからその前に日光街道を歩きましょうという相談がまとまったのだ。そのとき、風光明媚な景色を見てえのきどさんが、「これはもしかすると、日光街道のいちばんいい部分というものを僕は今日見てしまっているのかもしれないねえ」

との感慨を漏らしたことを覚えている。そう、えのきどさんの予感は正しく、草加から向こう、宇都宮に入るまでは、日光街道は景色の変化がない、単調な道が続くだけなのであった。日光街道を手っ取り早く楽しみたい人は、千住から草加まで歩いたら、次は宇都宮から日光まで行けばそれでいいような気がする。私は140㎞全部歩いたのだけど。

のんびり歩いていると、道の右側、綾瀬川と反対のほうに突如巨大な建築物が出現した。古本市場草加店である。おお、今日は古本屋に行くつもりはなかったのに、向こうから私を追いかけてくるのか。

同行者に休んでいてもらい、その間に道を渡って古本市場へ。見てしまったものは覗かなければ仕方ない。店は二階建てになっており、下はゲーム専門、二階の三分の二ぐらいが本に充てられていた。その売り場も、七割はコミックか。最近の古本市場にはあまり入ったことがないのだが、この草加店は80円均一と200円均一で一般書を分けていて、棚がわりと混沌としている。小説とそれ以外の境目が曖昧で、どこを見たらいいのかよくわからないのだ。しかしまあ、80円と200円という値段が分類なのだろう。ざっと見て、外に出る。子供たちがたくさん立ち読みに来ていて、そういう意味では街の交流場所になっていてよかった。

しばらく歩くと松原も終わりになる。以前は松原団地といっていた獨協大学前(草加松原)駅の近くに、湯屋処まつばらという施設があった。いわゆるスーパー銭湯だろうか。料金を見たら650円なので驚く。普通の銭湯と200円しか違わないではないか。それでも最近になって値上げしたらしく、以前は550円だったそうだ。お得な湯である。

しばらく浸かって楽しむ。外に出るとあちこちで飲み屋が暖簾を上げており、強く誘惑されたが、ここから家まで帰らねばならぬ。ぐっと我慢をして夕暮れの道を歩いた。

草加松原のけっこうな眺め

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