書評の・ようなもの サタミシュウ『彼女が望むものを与えよ』

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彼女が望むものを与えよ (角川文庫)

奥付では本日、2018年12月25日刊になっているサタミシュウ『彼女が望むものを与えよ』(角川文庫)の217ページを見て驚いた。

本書は、松久淳『彼女が望むものを与えよ』(光文社/二〇〇七年三月刊)を著者名を変更のうえ、文庫化したものです。

サタミシュウ=松久淳ということは、これまで一部にしか知られていなかった事実だと思う。もしかすると、今回の文庫化で初めて明かされるのではないだろうか。サタミシュウは調教を主題にした恋愛小説で話題になった。いわゆるSMにおいて主導権を握るのはS(ご主人様)の側ではなくてM(奴隷)であるということを、状況や人物配置を変えながら書き続けた作家で、特に第三作の『おまえ次第』は、自身の意図とは逆に調教相手の女性の虜になっていく男の空虚さを描いた、いい作品だったという記憶がある。第一作の『私の奴隷になりなさい』は、壇蜜が主演した映像化作品でも有名だ。

帯には「サタミシュウ、最後の作品」とある。ということは十冊めのこの文庫をもって松久は、この名義の創作を止めるのだろうか。『彼女が望むものを与えよ』も2007年の作品だから、実質は旧作である。SM(私にはB&Dのほうがしっくりくる)という領域を青春小説、恋愛小説として一般化した作家でもあり、その技量が別の形で発揮されるのを見たいと思う。

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