ディーノ・ブッツァーティ 一覧

幽の書評VOL.29 ジェームズ・ロバートソン『ギデオン・マック師の数奇な生涯』、ディーノ・ブッツァーティ『魔法にかかった男』、エドワード・ケアリー『肺都』

現実と幻想の境界線を容易に飛び越える 不審死した牧師が生の最後にしたためた長大な遺書が刊行され、その出版に至った経緯が序文として付された。ジェームズ・ロバートソン『ギデオン・マック牧師の数奇な生涯』は、そんな手記文学の定型を持った小説である。序文で「数奇な生涯」なるもののあらましが語られる。くだんの牧師は〈黒の顎門〉として知られる渓谷で滝壺に落...

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杉江の読書・ディーノ・ブッツァーティ『古森の秘密』(長野徹訳/東宣出版)

杉江の読書・ディーノ・ブッツァーティ『古森の秘密』(長野徹訳/東宣出版)

イタリア史において1925年は、ベニート・ムッソリニーニが国家統領に就任した年として記憶される。ディーノ・ブッツァーティはそのイタリアで生まれて1927年に作家デビュー、1935年に初期の代表作『古森の秘密』(長野徹訳/東宣出版)を発表した。物語はムッソリーニの独裁が完成した1925年の春に始まる。退役軍人セバスティアーノ・プローコロ大佐が、叔父アントニーオ...

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