芸人本書く列伝 一覧

芸人本書く列伝classic vol.51 声優の演じる落語と雲田はるこ『昭和元禄落語心中』

立川志ら乃という落語家がいる。落語立川流の真打で、志らく門下である。談志家元存命中に立川こしらと共に昇進を果たした。談志の生前では孫弟子で真打に昇進したのはこの二人だけだ。 こしらは突然落語家休業宣言をして伊豆で農業を始めたり、突然復帰したり、ingressを題材にした落語をやってその筋のファンを喜ばせたり、と行動が読めないのだが、志ら乃も一筋...

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芸人本書く列伝classic vol.50 立川吉笑『現在落語論』

芸人本書く列伝classic vol.50 立川吉笑『現在落語論』

立川吉笑『現在落語論』(毎日新聞出版)は、一言で表すなら「完璧」である。 落語論として完璧である。何が完璧なのかと言えば、現状分析である。吉笑の大師匠に当たる立川談志は「現状分析の出来ない者のことを馬鹿と呼ぶ」と定義したが、その伝で言えば吉笑はこの一冊で己が馬鹿ではないことを証明して見せた。自分の立つ位置の観察・分析が完全に出来ている。 ...

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芸人本書く列伝classic vol.49 篠原信一『規格外』

芸人本書く列伝classic vol.49 篠原信一『規格外』

この本が届いたその日あたりに、韓国大巨人ことチェ・ホンマンに詐欺容疑で逮捕状が出された、というネットニュースを見た。これ、シンクロニシティ?(それにしても、あの件はどうなったのだろうか)。 今回ご紹介したいのは、篠原信一『規格外』(幻冬舎)である。芸人本書評のコーナーなのに元柔道銀メダリストでカテゴリーエラーもいいところかとは思うが、緑...

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芸人本書く列伝classic vol.48 嘉門タツオ『熱中ラジオ 丘の上の綺羅星』

芸人本書く列伝classic vol.48 嘉門タツオ『熱中ラジオ 丘の上の綺羅星』

今、死ぬほどむかつきながら一冊の本を読み終えた。 死ぬほどむかついている。しかし非常におもしろい。敢えて言うならむかおもしろい。 嘉門達夫『丘の上の綺羅星』(幻冬舎)がその本である(ハルキ文庫収録にあたり現行題名に。また著者名も現在は嘉門タツオだが原文はママとする)。 今回に限り先にご注意申し上げておく。嘉門達夫ファンが読んだら逆に...

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芸人本書く列伝classic vol.47 井上二郎『芸人生活』

芸人本書く列伝classic vol.47 井上二郎『芸人生活』

又吉直樹『火花』(文藝春秋)がついに200万部を突破し、作品が全文掲載された『文藝春秋』の当該号も105万部を刷ったという。過去の最大部数は綿矢りさと金原ひとみの芥川賞受賞作が掲載された号で118万部だったそうだから、それに告ぐ数字だ。間違いなく『火花』は2015年最大のヒット作と言えるだろう。 芸人が書いた作品であり、芸人のことを書いた小説な...

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芸人本書く列伝classic vol.46 新倉典生『正楽三代 寄席紙切り百年』

芸人本書く列伝classic vol.46 新倉典生『正楽三代 寄席紙切り百年』

寄席に行くと15~20分の持ち時間をもらってさまざまな芸人が出てくる。落語家以外の芸人を色物と呼ぶが、その色物と落語家が上手い具合に配置されて登場する。必ず決まっているのは膝代わりだ。中入り後に最初に出てくるのが「喰い付き」、その後一人「膝前」を挟んだりなかったりもするが「トリ」を務める落語家の前に登場するのが「膝代わり」の芸人だ。ここは必ず色物の芸...

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芸人本書く列伝classic vol.45 藤原周壱『前座失格!?』

芸人本書く列伝classic vol.45 藤原周壱『前座失格!?』

すべての人間が夢を叶えられるわけではない。 天に輝く星があれば、その高さから墜ちた流れ星の数はもっとある。 さらに言えば、星の高さまで届くこともなく燃え尽きた者の数はその数十倍にも達するだろう。 芸人本の中にはそうした「星に届かなかった者たち」が自らの人生について綴ったものも多く存在する。実名を出して恐縮だが、秋山見学者『たけしード...

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芸人本書く列伝classic vol.44 三田完『あしたのこころだ 小沢昭一的風景を巡る』

芸人本書く列伝classic vol.44 三田完『あしたのこころだ 小沢昭一的風景を巡る』

初めてその番組を聴いたのは床屋だったと記憶している。 時刻は夕方。床屋の待合席には普段買ってない週刊漫画誌が置いてあったので、込んでいるのをこれ幸いと座りこみ、順番になって呼ばれないように、と祈りながらそれを読んだ。当然ながら自分の番が来たときにはすでに外が陰り始めており、夕暮れ時の空を床屋の鏡の中で眺めながら髪を刈られた。 そのとき、不...

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芸人本書く列伝classic vol.43 本坊元児『プロレタリア芸人』

芸人本書く列伝classic vol.43 本坊元児『プロレタリア芸人』

またもや休載が続いたあとの原稿らしい。その間の記憶があまりないので詳しくは書けない。 =========================== 二ヶ月のご無沙汰でした(宮田輝の声色で)。 いや、四号も休載してしまい、申し訳ありませんでした。その間、芸人本をまったく読んでいなかったわけではないのですが、なかなかタイミングが合わず。そのう...

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芸人本書く列伝classic vo.42 三遊亭圓歌『三遊亭圓歌ひとり語り 全部ウソ。』

芸人本書く列伝classic vo.42 三遊亭圓歌『三遊亭圓歌ひとり語り 全部ウソ。』

私と同じぐらいの世代で、十代のときに寄席出入りをしていた人は、三遊亭あす歌という音曲師のことを懐かしく思い出すことがあるはずだ。 こんな小汚い小屋(失礼)に、なんであなたのような人が! と驚いてしまうほどの、はっとするほどの美人で、三味線を抱えて座ったところになんとも色気があったものである。高座に出てくるとあす歌は、俗謡を一つ唄ってみせたあとで...

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